【事例】C社は医療系の大企業でありながら、長年「仕入れて売る」卸売業が中心で、自社の研究開発機能をほとんど持たない組織でした。一方、ある国立研究機関は、優れた技術開発成果を持っているにもかかわらず、
- どの市場で価値を発揮できるのか
- どの課題を解決しうるのか
が把握できず、社会実装につながらないまま停滞している状況でした。
そこで、C社と国立研究機関を結びつけ、それぞれが単独では生み出せない価値を共創する新しい連携組織のデザインに取り組みました。
■ 共創共栄型連携が生まれた瞬間
両者を橋渡しした当初、連携は順調には進みませんでした。
理由は、C社が把握している市場ニーズの多くが、国立研究機関の技術では直接的に応えられないものだったからです。
しかし、ここからが“共創”の核心でした。
「なぜC社のニーズは研究機関の技術で満たせないのか?」
という問いを、研究者と何度も議論し、まるで禅問答のような深掘りを繰り返しました。
すると、表面的な「ニーズの不一致」ではなく、
- 生物学的に本質的
- 学術的にもインパクトがある
根源的な問題が浮かび上がってきたのです。
その瞬間、研究者は「これは自分たちが研究すべき重要なテーマだ」と内発的に理解し、研究の意義を自ら見いだすようになりました。
研究機関にとっても、国の研究テーマとして十分成立する価値のある研究課題へと昇華していきました。
一方C社も、研究成果を活かして市場ニーズを満たすために、
- 新たな部門体制の構築
- 社内部門間の連携強化
を進めることになり、自社の組織能力そのものが変化し始めたのです。
■ 共創共栄型とは何か?
この事例は、企業とアカデミアという**“距離のある存在同士”が、共通の目的に向かって変化しながら歩み寄る**プロセスでした。
このモデルを、
共創共栄型(Co-Creation × Co-Evolution)
と定義しました。
一般的な「共存共栄型」の連携(企業同士・大学同士などの足並みをそろえた協調)とは異なり、共創共栄型は、
- 企業の市場開拓力と
- アカデミアの科学的解決力
が互いを刺激し合い、新たな知と価値を生み出し、同時にそれぞれの組織を進化させる点が特徴です。
特に、
企業 × アカデミアが社会課題の解決に挑むとき
に極めて有効なモデルです。
市場ニーズと科学の問いが交わる地点で、双方の成長が始まり、
“連携のために協力する”のではなく、
“共通の問題を見いだし、共に進化する”
連携へと変わります。
これが、C社と国立研究機関の取り組みから生まれた、
共創共栄型連携の本質です。

